アイツの溺愛には敵わない
これは願ってもない展開。
颯己と離れられる。
「ま、まあ…暇だから手伝うけど、どこに引っ越すの?この周辺のアパート?」
私の質問に、なぜかキョトンとする3人。
妙な沈黙に戸惑っていると、颯己がニヤリと口の端を上げた。
「はーちゃん、もしかして俺が引っ越すと思ってる?」
「違うの?」
頭の中を疑問符が飛び交う。
固まっている私を見ていたお母さんとお父さんが吹き出すように笑った。
「映結ってば、颯己くんが引っ越すわけないでしょ!」
「まあ、母さんの言い方が少し紛らわしかったからな~。勘違いするのも無理ないか」
勘違いとは…?
顔を見合わせてニコニコしているお母さんたちに首を傾げた。
「俺じゃなくて家財の引っ越しってこと。全面リフォームする関係で、その期間中は家財を家の中に置いておけないんだよ。だから大きめのトランクルームに移動させるってわけ」
「あ、そういうことね」
颯己が出ていくわけじゃないのか。