アイツの溺愛には敵わない

落ち着く匂い。


5才の時に、私がこのマンションに引っ越してきて…


それ以降、颯己の部屋には何度も出入りしてきてるから第2の家みたいな感覚なのかもしれない。


一緒に勉強したり、遊んだり。


色んなことがあったな…。


部屋の真ん中でボンヤリと窓の外を眺めていた時。



「ただいま」



背後から聞こえてきた声。


振り向こうとしたけれど、それよりも先に後ろからギュッと抱きしめられた。


「ちょっと、何やってるのよ」


「はーちゃんこそ、俺の部屋に入って何してるの?」


耳元で囁く颯己。


吐息まじりの低い声は、やけに大人っぽくて。


驚きのあまり肩がビクッと上がってしまった。


「ひっ、暇だから家の中をウロウロしてただけ。そんなことよりも離れてよ!」


体を捩って抵抗すると、お腹に回されていた大きな手がゆっくりと離れる。


「いきなり抱きついてこないで!」


「隙を見せてたはーちゃんが悪い」


颯己は足元に置いてあったコンビニの袋を持ち上げると、意地悪っぽく笑った。


< 48 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop