アイツの溺愛には敵わない
「それじゃあ、私は先に学校に行くから。今日はお母さんが颯己の分のお弁当も作ったから、机の上に置いてくね」
「はーちゃん、もう行くの?」
部屋を出ようとする私を何故か名残惜しそうに引き留めるのも、毎朝恒例。
「行くに決まってるでしょ」
「もう少し、お喋りしよ?」
「そんな暇ない。電車の時間あるし」
「じゃあ、昔みたいに一緒に登校しようよ」
「しない。じゃあね」
淡々とした口調で受け答えをした後、足早に颯己の家を出た。
言い方、ちょっとキツかったかな。
いや、これぐらいがちょうどいい。
幼なじみゆえに近くなりすぎた距離を空けるためにも。
もう二度と…
アイツを巻き込みたくないから。