アイツの溺愛には敵わない

「はーちゃん、どれ食べたい?」


“さあ、どうぞ”と言わんばかりに颯己は両手を広げる。


すぐに目がいったのは、鮭のおにぎりとメロンパン。


どちらも私が大好きな食べ物だ。


だけど、颯己がお金を出して買ってきたものだから私が率先して選ぶのもな…。


「私は何でもいいから、先に食べたいもの選んでよ」


「いいの?」


「うん」


その場に腰を下ろすと、颯己は鮭のおにぎりとメロンパンを私に差し出した。


「はーちゃん、これ好きでしょ?」


「う、うん…」


「飲み物、俺は麦茶にしようかな。はーちゃんはどうする?」


余っているのは紅茶とほうじ茶。


どちらも、普段…私が好んで飲むものだ。


「じゃあ、ほうじ茶もらうね」


ほうじ茶のペットボトルを手元に置くと、颯己は残った食べ物から焼きそばパンを手に取って食べ始めた。


うーん……。


好きな食べ物や飲み物について、今まで颯己に話したことあったっけ?


単に私が忘れてるだけなのかな…。


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