アイツの溺愛には敵わない
「あれ?あまりお腹空いてない?」
「そうじゃなくて、私の好きなものばかり買ってきてくれてるから不思議に思ってただけ。食べ物の好みって颯己に話した覚えがないから……」
「俺が何も知らないはずなのにどうして…ってこと?」
「うん」
頷く私に、颯己は指で鼻をこすりながらフッと笑った。
「長い付き合いだからね。はーちゃんの言動見てれば、わざわざ聞かなくても分かるよ」
「そうなの?」
「例えばメロンパンだったら、コンビニやパン屋に行くと必ずチョイスしてたでしょ」
確かに。
「小学生の頃、はーちゃんの誕生日パーティーに呼ばれてお祝いしに行った時は、ケーキよりもメロンパンに喜んでたし、幸せそうに頬張ってたよね」
そう言えば、小さい頃は誕生日パーティーを開いていたし、颯己の家族も呼んだことがあったな…。
ケーキも嬉しかったけど、それ以上に大好物のメロンパンが嬉しかったんだよね。
「……よく覚えてたね、そんなこと」
「俺にとっては、はーちゃんの可愛い笑顔を堪能できた大切な思い出だから」
颯己は懐かしそうに目を細めて微笑んだ。