アイツの溺愛には敵わない
「どういたしまして。そういうところ、本当に律儀だよね」
颯己はパーカーを羽織ると、柔らかい笑みを浮かべた。
「はーちゃんの温もりが残ってるから、あったかい」
ついさっきまで私が着ていたパーカーを今は颯己が着ている。
ただそれだけのことなのに…
どうして、一瞬…心臓が跳ねたんだろう?
戸惑っていると、颯己は両手で私の頬を包んだ。
「ちょっと、何してるの!?」
「はーちゃんが俺のこと見たまま固まってるから、触れたくなっただけ」
「もう、なんなのよ」
よく分からない理由に眉を寄せると、颯己の顔が近付いてきた。
「外で風にあたってたから、頬が冷たくなってるんじゃないかと思ってたけど、少し熱いね」
「えっ…」
「もしかして、風邪っぽい?」
「ううん、全然」
「ふーん……」
呟くように口にした颯己。
私を見つめながら、含みのある笑みを浮かべた。