アイツの溺愛には敵わない
颯己が女子と一対一で話してるのは珍しいな。
たくさんの女の子たちに囲まれてる光景は、よく見るけど。
「あの女の人、2年の霧島 椎歌(きりしま しいか)先輩だよね。いつ見ても美人だなぁ」
「うん」
校内一の美女と言われている霧島先輩。
サラサラの黒髪ロングで、くっきりとした目鼻立ち。
清楚で気品があって穏和な性格だから、多くの男子が狙っている。
その先輩が颯己と二人きりで会話…。
何の話をしているんだろう?
颯己は後ろ姿だから顔は見えないけど、霧島先輩は嬉しそうに微笑んでる。
なんだか良さげな雰囲気。
「あの噂、本当みたいだね」
「噂…?」
綾芽ちゃんは自分の口元に手を添えながら、私の耳元に顔を近付けた。
「つい最近、別のクラスの子から聞いた話なんだけど、霧島先輩って真浦くんのことが好きらしいんだ」
「ふ、ふーん……」
驚きの声を出しそうになったのを抑えて、冷静に反応しようとした結果…
少し不自然な、ぎこちない相槌になってしまった。