アイツの溺愛には敵わない
「もしかして、もう付き合ってたりして…」
「それは絶対に無いよ」
「えっ…!?」
「あ、いや……もしも真浦くんが先輩と既に付き合い始めてるなら、その事実が学校中に知れ渡っていそうだし」
驚いた顔で瞬きを繰り返す綾芽ちゃんに、苦笑いしながら慌てて補足する。
“それもそうだね”と納得する姿を見た私は胸を撫で下ろした。
おかしいな…。
今、どうして真面目なトーンで否定しちゃったんだろう…。
“どうだろうね”とか“そうかもしれないね”とか。
断定的な言い方をせずに、サラリと流すことだって出来たはずなのに。
綾芽ちゃん、ちょっと不思議に思ったかもしれない。
今後は気を付けなくちゃ。
その後、渡り廊下から離れて教室に戻ってきた私たち。
予鈴が鳴るまで綾芽ちゃんとお喋りしていたけれど、会話の内容が殆ど頭に入ってこなかった。
午後の授業も勉強に集中出来なくて…
颯己と霧島先輩が会話をしている光景が頭から離れないまま、気付けば放課後を迎えていた。