アイツの溺愛には敵わない
「そうそう、駅の近くに新しい小物ショップがオープンしたの知ってる?」
「初めて聞いた…」
「今日、帰りに寄ってみない?可愛い小物がいっぱいあるみたいなんだ~」
「うん」
「やったぁ、放課後が楽しみ!」
「その前に授業を乗りきらなきゃだけどね」
「でも、未来に楽しみがあると憂鬱な授業も頑張れるよ!モチベーションが上がる!」
「…そうだね」
今日も笑顔いっぱいで可愛いな、綾芽ちゃん。
誰とでも気さくに喋るし、飾らない性格だから男子からも女子からも好かれてる。
私もそんな風になりたい…と憧れるけど、基本的に人見知りだし、あまり愛嬌もないから難しいだろう。
「もうこんな時間か…」
綾芽ちゃんと話をしていると朝の時間が、あっという間に過ぎていく。
気付けば、朝礼が始まる5分前になっていた。
綾芽ちゃんが席に戻ろうと立ち上がった時、不意に教室の外が女の子たちの歓声でざわめき始める。
来た…。
チラリと教室の出入口に視線を向けると、制服を纏った颯己の姿が目に映った。