アイツの溺愛には敵わない
「ただいま」
帰宅すると、家の中は人の気配がなくて静か。
颯己はまだ帰って来てないようだ。
今日も私より先に教室を出て行ったから、てっきり家に居ると思ってたんだけど…。
珍しいな。
自分の部屋に入った私は、着替えをしようと制服のリボンをほどいた。
もしかして、霧島先輩と一緒に放課後デートに行ってたりする?
お昼休みの会話は、そのお誘いだったのかも。
今頃、仲良く話をしながら楽しい時間を過ごしてたりして…。
「……」
あれ?
なんで心がざわついてるの…?
颯己が霧島先輩とどこで何をしていたって別にいいじゃん。
二人が意気投合してるのなら、喜ぶべきことでしょ。
そもそも霧島先輩と一緒にいるかどうか分からないのに。
勝手な想像を繰り広げてソワソワしてるなんて、変な私。
部屋の端から端を行き来しながら、とりあえず気持ちを落ち着かせようと試みる。
暫く経った時、玄関のドアが閉まる音が聞こえてきた。
お母さんかな?
部屋を出てみると、帰って来たのは颯己だった。