アイツの溺愛には敵わない

「ただいま」


帰宅すると、家の中は人の気配がなくて静か。


颯己はまだ帰って来てないようだ。


今日も私より先に教室を出て行ったから、てっきり家に居ると思ってたんだけど…。


珍しいな。


自分の部屋に入った私は、着替えをしようと制服のリボンをほどいた。


もしかして、霧島先輩と一緒に放課後デートに行ってたりする?


お昼休みの会話は、そのお誘いだったのかも。


今頃、仲良く話をしながら楽しい時間を過ごしてたりして…。


「……」


あれ?


なんで心がざわついてるの…?


颯己が霧島先輩とどこで何をしていたって別にいいじゃん。


二人が意気投合してるのなら、喜ぶべきことでしょ。


そもそも霧島先輩と一緒にいるかどうか分からないのに。


勝手な想像を繰り広げてソワソワしてるなんて、変な私。


部屋の端から端を行き来しながら、とりあえず気持ちを落ち着かせようと試みる。


暫く経った時、玄関のドアが閉まる音が聞こえてきた。


お母さんかな?


部屋を出てみると、帰って来たのは颯己だった。


< 71 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop