アイツの溺愛には敵わない
「ちょっと、見ないでよ!」
「着替えの途中で部屋から出てくるはーちゃんが悪い」
正論すぎてぐうの音も出ない。
「もっと危機感もってね」
「……うん」
ぎこちなく頷く私に、颯己は目を細めて優しく笑った。
「俺以外の男の前で無防備な姿を曝すのは絶対に禁止だよ?」
「颯己にだって、今後はこんな姿は見せたりしないから」
「俺は家族枠だから例外でいいじゃん」
「よくない」
私の胸元を指差していた颯己の手をペシッと軽く叩いて、素早く自分の部屋に入る。
ドアをバタンと閉めた途端、火が点いたかのように顔が熱くなった。
めちゃくちゃ恥ずかしい。
穴があったら入りたいよ…。
火照った頬を両手でムギュッと挟んだ。
着替えをしている時に考え事をするのは厳禁だな…。
っていうか、颯己が珍しく女の子と会話なんかしてるから、こんなことになったんじゃん。
顔が熱いのも、着替えを中断しちゃったのも…
元を辿れば、全て颯己のせいだよ…。