アイツの溺愛には敵わない

「ちょっと、髪が濡れてるじゃない!」


「さっき洗ったからね。はーちゃんも勉強が終わったらお風呂入りなよ?」


「はいはい。それよりも髪を洗ったのなら、ちゃんと乾かしなさいよ。風邪ひいたってしらないからね」


「じゃあ、はーちゃんにお願いしようかな」


もう一度、辞典を受け取るべく伸ばした手をピタリと止めた。


「何を?」


「髪、乾かして?」


「は?自分でやってよ」


「はーちゃんにお願いしたい気分。小学生の時みたいに」


そう言えば、颯己の家に泊まった時に一度だけコイツの髪を乾かしたことがあったっけ。


だから何だって言うのよ。


そんな人懐っこい笑顔でお願いされたって、引き受けるわけが……


いや、待てよ…。


これって、霧島先輩とどういう雰囲気なのか、さり気なく聞くチャンスなのでは?


どんな話をしてたのか全く気にならないって言ったら嘘になるし。


事実かどうかも分からない想像を繰り広げてモヤモヤするぐらいなら、本人に聞くのが一番だ。


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