アイツの溺愛には敵わない
最近、颯己のせいで情緒不安定になることが多い気がする。
感情の起伏が激しい。
以前は、こんなこと無かったのに。
……って、また颯己のこと考えてる。
気持ちを穏やかにするためにココアを飲みに来たんでしょ?
今はリラックスに徹しよう。
マグカップを口に運ぼうとした、その時。
「ホットココア、俺も飲みたいな」
聞こえてきた声にビクッと肩が跳ねる。
右側に顔を向けると、ソファの背もたれに頬杖をついて、私を見ている颯己の姿が目に飛び込んできた。
「はーちゃん、驚きすぎ」
「だ、だって颯己がいきなり喋りだすから」
「その前に“ただいま”って、リビングの入り口で声かけたよ?」
「ふーん。そ、そうだったんだ」
全然、気付かなかった。
「何かあった?」
「えっ…」
「だって、はーちゃんがココアを飲むのって気持ちを落ち着けたい時でしょ?」
どうして、それを……。
そんなこと颯己に一言も言った覚えないのに。