アイツの溺愛には敵わない
「俺が知らなかったとでも?」
“当然でしょ”と言わんばかりの得意気な笑みが返ってくる。
「俺たちの幼なじみ歴も長いからね。言葉で教えてくれなくても、はーちゃんの行動パターンを見ていれば自然に分かることだってあるよ」
「そんなものなの?」
「うん」
単に颯己の観察眼が鋭いだけなのでは?
「んで、どうしたの?俺で良ければ話を聞くよ」
ソファの後ろから移動してきた颯己は私の隣に腰を下ろす。
顔を覗き込まれた私は、視線を逸らした。
「き、今日の課題が終わったから息抜きしてただけ」
もちろん、実際は颯己のことを考えてモヤモヤしていたわけだけど。
そんなこと言ったら最後、内容の詳細を求められて、話が長時間に及ぶのは必至。
本当のことは黙っておくにこしたことはない。
「……なるほど。確かにちょっと面倒な課題だもんね。はーちゃん、もう終わらせたんだ」
「う、うん。学校で綾芽ちゃんと一緒に取り組んで、半分ぐらい済ませてきたから」
「あぁ、あのオトモダチとね……」
颯己の表情が少し曇った。