アイツの溺愛には敵わない
「あっ、そうそう……」
リビングのドアに手を掛けたまま、颯己が振り向く。
「今日、霧島先輩に会って来たよ」
「ふーん、ちゃんと行ったんだ」
「はーちゃんに言われたからっていうのもあるけど、どうして来てくれなかったの?なんて、後で先輩に言い寄られても鬱陶しいし迷惑だと思ったから」
棘のある言い方。
霧島先輩はそんなことしないと思うけど…。
「話の中身、気になる?」
「言いたくないなら、 無理に言わなくてもいいわよ」
とは言いつつも、ちょっと聞きたいのが本音だったりする。
でも、話すのが嫌だっていうなら仕方ない。
「……素直じゃないね」
「今の、どういう……」
「霧島先輩に告白された」
「………」
なんだろう、この感じ。
昨日から予想していたことなのに。
颯己の言葉を聞いた途端、心がズシンと重くなった。
まるで、鉛の塊がぶら下がってるみたい。