アイツの溺愛には敵わない

喜んでなんかいない。


だけど、颯己の言葉で心に浮き沈みがあったのは確かだ。


「……こんなはずじゃなかったのに」


どうして、思い描く道筋から外れてしまうんだろう。


颯己が幸せな毎日を送るには、余計な世話を焼くような厄介な幼なじみがいつまでも傍に居ちゃいけない。


アイツから離れなくちゃ。


関わらないようにしなくちゃ。


嫌われるぐらい冷たく接して、幻滅されるぐらい嫌味な態度をとって。


それなのに現実は……。


相変わらず世話を焼いたり、干渉したり。


更には霧島先輩と颯己の会話が気になってモヤモヤする始末。


二人が仲良くなってくれたら…と思いながらも、付き合わないっていう結果になって心が軽くなるなんて。


「最低だな、私……」


矛盾してばかりで、何も噛み合ってない。


どんよりした気持ちでため息をつく。


ココアを飲もうとしてマグカップに口をつけたけれど、慌てて離した。


ちょっと待って。


これ、アイツも飲んだよね!?


ということは今のって……間接キス?


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