アイツの溺愛には敵わない
日に日に颯己のことを考える時間が増えている。
“考えないようにしよう”と思えば思うほど、その気持ちに反比例して。
私にとって颯己は……幼なじみ。
それ以上の特別な感情なんて無い。
意識してるとか、そんなんじゃないよ。
心の中で深く頷いた私は、帰り支度を始めた。
いつもなら“一緒に帰ろう”と笑顔で声を掛けてくれる綾芽ちゃんが今日はいない。
体調不良で早退しちゃったけど、具合大丈夫かな…。
昨日から風邪気味だったし、ゆっくり休んで元気になって欲しい…。
支度を済ませてスクバを肩にかける。
席を離れようとした、その時。
「はぁ……」
大きなため息と共に、高塚くんが教室に入って来た。
終礼の後、颯己と同じぐらいのタイミングで帰ったのに、どうしたんだろう?
「あ、琴宮さんだ!今から帰るの?」
「うん。高塚くんは…?」
「部室のドアにブレザー挟んじゃって、ボタンがとれちゃったんだ。だから縫いつけようと思って」
そう言えば、高塚くんってバスケ部に所属してるんだっけ。
帰宅したと思ってたけど、まだ学校に居たんだ。