でも、さわりたかったよ
ざっと音を立てて派手にビニール傘が開き、その向こうの景色は絵具のパレットのように滲んだ。
先輩と二人でこうして一つの傘で歩くのも、なんだか久しぶり。
先輩は元々猫背だけれど、私の背が低いせいで、先輩はますますかがんだような体勢になっている。
私はどうにか先輩を濡らさないようにと傘を右に傾け、つま先で歩く。
「今月号はメイク特集なんだ。アイシャドーがね、上手く引けないから」
車が横切るたびに、水たまりを掻く大きな音がして、それにかき消されないように大きな声で話した。