でも、さわりたかったよ
先輩の左の横顔はまっすぐ前を向いていて、下から見るまつげは女の子みたいにくるんと長い。
「先輩は漫画しか読まないから、興味ないでしょ?いつも、先輩のかばんの中、漫画で重たくなってるもんね」
くふふと笑うと、先輩の左の口角も上がる。
先輩の一番好きな漫画は、主人公がメジャーリーガーになる、あれ。
「先輩……相合傘、久しぶりだね」
濡れたアスファルトの上に雨粒が踊るように跳ねるのを左右の靴が弾き、私は思わず歩むリズムを緩める。
もっとゆっくり、歩こう。
せっかく先輩の隣を歩けるのだから。
なんだ、ちょうどよく青信号になってしまった。
ああ、やっぱり、大通りのひとつ向こうの本屋さんにしようか……。
「真帆!」