でも、さわりたかったよ
1年前、夏期補習のたびに靴箱で顔を合わせることだけが楽しみだった。
中庭で紙パックのヨーグルトのストローをくわえながら、その日も校舎の時計を見ていた。
先輩が来るのはたぶん、あともう少し。
一応靴箱まで向かってきょろきょろ見回すものの、まだ誰もいないことを確認してその場から引き返し、再び中庭のベンチに座る。
何度も何度も、偶然というものを作り出すこの行為を、繰り返している。
とは言っても今日は最後の補習だから、できれば挨拶くらいしたい。
できれば自分の名前も伝えたいし、できれば……今日一緒に帰りませんかと、声に出してみたい。