でも、さわりたかったよ
電車に二駅揺られ、この市で一番大きなC駅で降りると、学習塾の連なる大通りを歩き出す。
一番大きな建て物の塾の入り口に差し掛かると、ぐるりと裏手に回って人通りのない場所で立ち止まった。
塾の裏の場所からは、何本もの電車の線路が見えて、立ち入れないよう柵としてフェンスが高々と設置されている。
去年よりも柵の高さが倍になったのは、隣にある大手予備校の浪人生が年度末に将来を悲観して線路に立ち入り自殺を図ったからだって、あっくんが言っていた。
フェンスの網目に五本指を通して、ぎゅっと力を入れる。
ざらついた錆の感触が指に突き刺さるのを感じながら、一番遠くにある線路に貨物列車が進んで行くのを眺めた。