でも、さわりたかったよ
長いベンチの端っこに、同じ高校の制服の女の子が座っていた。
うつむき加減により肩上のショートボブが前下がりとなり、生気のない表情でどこか一点を見つめていて、私はその光景を前に全身が硬直する。
彼女はかばんをぎゅっと抱きしめるように胸に押し当てて……涙を、流していた。
背中にじわりとした汗が広がる。
コンビニの袋をすべり落としそうになり、我に返って改札まで駆け出した。
袋の中でアイスが暴れるように音を立てて上下し、心臓はそれ以上にコントロールが効かないで、こめかみで脈を打った。
「先輩―――」
声にならないまま喉の内側で叫んだけれど、今度は現れてはくれなかった。