でも、さわりたかったよ
小早川敦司こと、あっくん。
あっくんは仕草や言葉遣いが女性的で、以前はそれをからかわれるたびにすごく不快そうな顔をしていたのだけれど、最近になって何かが吹っ切れたのか、積極的に自分を「あっちゃん」と呼ぶよう修正するようになった。
とは言っても、幼い頃から近所ではこの呼び名で通っているのだから、今さら矯正するなんて難易度が高い。
私はぺたんこのかばんをあっくんの自転車のカゴに投げ入れ、自由になった両手を振りながらスキップして歩いた。
「ねえ、聞いてあっくん!先輩がね、朝起きたら部屋にいたの!」
えー?とあっくんは笑って、私のかばんをカゴの奥に押し込み、自分のかばんも肩から下ろして私のそれに重ねた。
「何言ってんの。真帆、古文の宿題した?」
「朝起きたら横で寝てたの!嘘かと思って寄り添ったら、抱きしめてくれたんだよ」
立ち止まるあっくんを置いて、私の体はどんどん跳ねていく。体が軽くてスキップするたびに空まで飛んでしまいそうだ。