でも、さわりたかったよ
仕方なくパジャマ姿のまま階段を降り、リビングに顔だけ出して親がいないことを確認して、玄関をがちゃりと開ける。
庭の植木鉢が朝露をきらきらと纏っていた。
あっくんが自転車の鍵のついたストラップをくるくると人差し指で回しながら、おはよおーと緩い声を出した。
「真帆、昨日休んだでしょ、学校。どうせ仮病でしょ?」
「仮病じゃないよ。風邪だよ、風邪」
「うっそだあ。高橋くんが、みんなが降りた電車にわざわざ乗っていく真帆を見たって、教室で言ってたもん」
適当に履いたサンダルのまま仕方なく玄関を出ると、家の隣にあるゴミ捨て場から近所のおばさんが不思議そうにこっちを見ていることに気づき、なんだか気まずく感じてあっくんの腕を掴み玄関まで引き寄せた。