でも、さわりたかったよ
あの人の顔には、色がある。
つるつるとした肌をキャンバスにして、ピンクだってオレンジだって、女の子の色は全て、あの人のもの。
いくらシルエットが近くたって、私とあの人じゃモノクロとカラー写真くらい違う。
「……先に言ってよ。そういうのが好きなら」
雨の音より小さな声でそう呟く。
漏れ出したインクみたいな黒いかたまりが、底にたまってかさを増していく。
横断歩道を渡り終えたところで、立ち止まる。息の仕方を思い出すため、吸うんじゃない、まず吐くところから始める。