でも、さわりたかったよ


「あっちゃんのかばん重い!」


冬服になった彼女が、ブレザーの肩に二つのかばんを掛けて唸った。

「あー、それ全部中身漫画。メジャーリーガーのやつ、お前も読む?」

彼女はじとっとした視線を先輩に向け、呆れたように首を振った。


「そんなんだから赤点取って夏期補習に選ばれるんだよ」

「はは、お前も同じだろ」

「あたしは期末テスト期間に熱が出て、朦朧としながらテスト受けて、たまたま赤点になっちゃっただけなんだから。あれのせいでお母さんが怒って駅前の一番大きな塾に入れられちゃったんだよ」

彼女は憂鬱そうに目線を落とし、肩を下げた。

肘までずり落ちた二つのかばんを、今度は先輩がひょいっと奪う。

「塾の参考書も重いのな」

先輩は笑って、励ますように彼女の背中をさすった。

私はそれをただ、見ていた。


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