でも、さわりたかったよ
「はい、こけしの完成!」
頭の上にぽんと手を置いて、気配が離れた。
目を開けるとあっくんは膝立ちをし両手を高く上に上げ、変な声が伸びていて、私はその申し訳程度の喉仏を下から見上げた。
顔に散った毛を横にはたきながら、そのまま首を下に撫でる。
首元がスースーして、落ち着かない。
「僕、カリスマ美容師かもしんない」
言いながらあっくんが立ち上がり、遮るものがなくなった鏡に、私の知らない私が映った。
髪に指を通しながら、思う。もう少しだけ胸の痛みが引いたら、あっくんのこと、あっちゃん、って呼んであげよう。