でも、さわりたかったよ

駅前の広いロータリーの、端に並ぶベンチに腰かけて、スーツ姿のサラリーマンが行き交うのを眺めていた。

平日の朝に制服姿でこんなところにいると、みんなちらちら見てくるから長居はできない。


誰とも目が合わないように視線を下げる。革靴やハイヒールの中に、白のエアフォースを探す。



どうして。
どうしていないの。



心の傷を免罪符にして私は今何だって許された。
こうして遅刻して行ったって担任は何も言わない。何も言えない理由があるから。


あっちゃん。


女みたいに呼ぶなよ、って嫌そうに言った人。


校舎のどこにだってあっちゃんはいない。
けれどどこに行ってもあっちゃんを思い出す。



同じだけ時間をかけて一緒に大人になりたかった。

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