でも、さわりたかったよ


あっちゃんがこのベンチの隣に座っていた。


塾の後はこのベンチで、いくら寒くても一秒でも長く隣にいたくて、何本も帰りの電車を見逃した。

だらんと力を抜いてあの肩に体を預けると、頭一つぶんの重みをもらってくれた。

早く帰らないとママに怒られるかも、っていうハラハラも、いつだって半分もらってくれた。


そうやって夏も秋も冬もあっちゃんと過ごしたのに、この春だけはどうして一人で生きないといけないの。

そんな残酷なことって、ある?


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