綾川くんが君臨する
え……?

ええ、ぇぇ?

嘘だよね、ここでじわっとくるのは、さすがに情緒オカシイ。

いくら、自分が綾川くんの眼中にないからって……。



「……、そんな、泣くほど飲みたかった、?」



綾川くんの、珍しすぎる動揺っぷり。


そんなので泣いてたら幼稚園生だよ。

でも……好きバレするよりマシ、だと思って。



「………飲、みたかった」

「……、……」


一拍遅れて、はあ、とため息が聞こえた。

めんどくさい、って感じの。



「黒鐘、こっち来な」


玉座から気だるくて優しい声が誘ってくる。


近づいたら、またヘンな貼り紙を背中に付けられちゃうかもしれないのに、近くにいればいるほど抗えないのが引力の原理。


でも、どうにかがんばってじっとしてたら、痺れを切らしたように綾川くんが腰を浮かせて。



──ぐい、と、わたしの肩を抱き寄せた。

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