綾川くんが君臨する

「真面目にわかりやすく答えてくれないかなあ?」

「だからあ、おれもわかんなーい」


「………」

「けどー……。眠くて眠くて、相手の話ぜんぜん聞ーてなくて、テキトウに“うん”と“わかった”だけで会話してたら、なんか勝手に交際契約が交わされてたことが20回くらいはあった」


「……? ……んぇっと、」



思考が行き詰まった。


つまり、綾川くんが睡魔に襲われながらもなんとか放った「うん」と「わかった」で、
知らずうちにお付き合いスタートしてたことが、20回程あったってこと……?


意味は理解できたけど……。

──いや、理解でき……



「そんなことある? しかも20回も」

「おかげで最悪な目に遭った。知らん女に“8股してサイテー”っていきなりキレられたり……」



いや、いかにもおれ被害者ですみたいな顔で語ってるけど……っ。



「悪いのは綾川くんじゃんっ」

「眠くないときは告白ちゃんと断ってる」

「いくら眠くても告白されたときくらい意識研ぎ澄ませとこうよ〜……」



眠いときは無意識に告白OKして、眠くないときは断ってるから、
『来る女を気分で選ぶ』なんて言われてたんだ……。
< 16 / 78 >

この作品をシェア

pagetop