綾川くんが君臨する
「真面目にわかりやすく答えてくれないかなあ?」
「だからあ、おれもわかんなーい」
「………」
「けどー……。眠くて眠くて、相手の話ぜんぜん聞ーてなくて、テキトウに“うん”と“わかった”だけで会話してたら、なんか勝手に交際契約が交わされてたことが20回くらいはあった」
「……? ……んぇっと、」
思考が行き詰まった。
つまり、綾川くんが睡魔に襲われながらもなんとか放った「うん」と「わかった」で、
知らずうちにお付き合いスタートしてたことが、20回程あったってこと……?
意味は理解できたけど……。
──いや、理解でき……
「そんなことある? しかも20回も」
「おかげで最悪な目に遭った。知らん女に“8股してサイテー”っていきなりキレられたり……」
いや、いかにもおれ被害者ですみたいな顔で語ってるけど……っ。
「悪いのは綾川くんじゃんっ」
「眠くないときは告白ちゃんと断ってる」
「いくら眠くても告白されたときくらい意識研ぎ澄ませとこうよ〜……」
眠いときは無意識に告白OKして、眠くないときは断ってるから、
『来る女を気分で選ぶ』なんて言われてたんだ……。