綾川くんが君臨する
「ホ、テルって……えっと、ホテル?」
「そ。みんながイチャイチャあんあんする場所。俗に言うラブ──」
「わーっ! もういい、わかった、っ」
つい大きな声が出た。
あーあ、自爆。
軽い気持ちで尋ねたのがだめだった。
片や綾川くん、目をうっすら細めて、わたしの反応を面白がってるみたい。
こういうとき、こっちも同じくらい軽いテンションでリアクションすべきなんだろうけど……。
「悲しきかな、おれにもその辺の男子高校生と等しく、せーよくなるものが存在するので、誘われれば、まあラッキー、みたいに──」
「っ、だから、もうわかったってばぁ」
無理だよ、ちゃんと笑えない。
貼り付けてみたけど、気を抜いたらすぐ崩れちゃいそうで、
もう保たないと思ったわたしは、ギ、と椅子を引く。
「教室に、課題忘れたから取ってくる」
「は? まだ話の途中なんだけど」
無視して放送室を出た。
「──……最後まで聞けよ、どアホちゃんめ」