綾川くんが君臨する
ふたりの会話に耳を傾けながら、とりあえず机をごそごそ漁るフリをする。
綾川くんがガード固い?
嘘でしょ……!
うとうとしてる間に告白オッケーするわ、ぼーっとついて行ったらホテルだったけど、まあラッキーって言っちゃうような人なんだよ?
わたしは人生で初めてのキスだったのに、綾川くんときたら……っ。
もうやだあ!
好きになる人を完全に間違えた!
悲しいのと腹立たしいのが混ざって、ぐわぐわ胸のあたりから這い上がってくる。
綾川くんなんか……
もう、綾川くんなんか……。
「元カノNo.10の子とかもっと悲惨だよ? ホテル行ったのに直前で“あんたに欲情するの難しい”ってバッサリ切られたんだって」
「ひー、容赦な……っ」
──……え?
はた、と思考が止まる。