綾川くんが君臨する
──って。
自分に都合のいいことばっかり信じようとするあたり、わたしまだ相当綾川くんのことが好きなんだなあ……。
はあ、と何度目かわからないため息が出たとき、だった。
扉のところに、突然、ぬっと黒い影が現れた。
「黒鐘、おっそい。課題あった?」
ばく、と心臓が暴れる。
──綾川くん。
なんで来たの、放送室でくつろいでればよかったのに。
とっさに、机の中からテキトウなテキストを引っ張り出した。
「あ、あったよ」
「じゃーさっさと放送室戻んよ」
「………」
しばらく動かないでいたら、すたすた、こっちに向かってくるではないか。
机の上に、綾川くんの影がかかる。
「なんか。さっきから様子おかしーねお前、」
「っ!」
「そわそわして、目見ようとしないし」
「う、ぅ……それは、綾川くんがさっき、やたらと生々しい話をしようと、してたから」