綾川くんが君臨する
だから今日も、桃ジュースと見せかけての激苦青汁に違いないし。
労ってあげるとか言いながら、意味わかんない貼り紙を隠し持ってるに違いない。
同じ手は踏まない、今度こそ。
「べつに綾川くんのために放送室に来たわけじゃないよ、わたしが放送委員で、今日の放送当番だから、だから」
キッと睨んで、放送室の機材に向き直る。
えーと、まずは下校の音楽流さなくっちゃ。
あ、その前に、空手部から頼まれてた体験入部の日程のアナウンスをして……。
それから今日の施錠時間のお知らせ、その20分後に、下校をうながす最後のアナウンスをして……。
カチ、とマイクをオンにしようとした寸前。
「へー。おれの優しさ無下にしちゃうんだお前」
わざとらしい煽り声に、慌ててスイッチから手を離した。
「綾川くんシーッ。 喋っちゃだめ」
「飲まないの? 山梨県産の白鳳をふんだんに使った贅沢な桃ジュースなのに」