綾川くんが君臨する

不機嫌オーラに気圧されて、とりあえず土の上に投げ捨てられた白手袋に視線を逃したのもつかの間。


襟をぐいっと掴まれ、無理やり向かい合わせられる。

ダークな瞳に呑み込まれれば、ぞく、とたしかな戦慄が体を駆け抜けた。



「あ、やかわく……――ん、ゃ」



あっけなく呼吸を奪われ、同時に心臓がとち狂う。


どうしてこのタイミングで、学校で、誰かが見てるかもしれない外で。

瞬時に頭を埋め尽くした疑問も、甘い唇はすべて帳消しにしてしまう。



花壇に屈むというなんとも不安定な体勢のわたしは、皮肉にも襟元を掴まれているおかげで尻もちをつかずに済んでいるので、
迂闊に突き飛ばすこともできず、ただ受け入れるしか道はなく。


「……ぅ、あ」


ついには熱に侵されバランスを崩し、すがるように綾川くんに抱きついてしまった。
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