綾川くんが君臨する
人ひとり分の体重が勢いよく乗っかったというのに、びくともせず受け止めてくれる綾川くん。
体幹つよすぎ……。
なんて余計なことを考えながら体勢を立て直そうと試みるも、腕の力を緩めてくれない。
ちょっと苦しいし密着しすぎると心臓もたない。困る。
「あの、も……離して」
すると、一瞬楽になった。
本当に一瞬だけ。
次にまばたきをしたときには、私の首に手がかけられていて。
──え、なに。
まさかシメころされる?
「黒鐘」
「っひ、」
「この下、何隠してんの」
「……、……え?」
恐ろしさからぎゅっとつぶった目を、ゆっくりと開いて相手を見る。
「この……下?」
「朝、風間にボタン留めさせてたでしょ、一番上まで」
「……えっと」
記憶を巻き戻した。
そういえば今朝そんなことがあった気もする。
留めさせてたんじゃなくて、留めてくれた、が正しい。
訂正しようと口を開いたのに、綾川くんときたら返事も待たずにボタンを外していく。