綾川くんが君臨する

「いつも二番目まで開けてるくせに」

「ちょっ、えぅ、やめ」


抵抗むなしく首元が空気に晒された。


「……、この赤いの何?」


どこから出してるんだってくらい低い声。



「む、虫に、刺された」

「は」

「虫に刺されて赤くなってたみたいで、風間くんが、ボタン留めといたほうがいいよって」

「………」



じっと見つめられて、そこに熱が集う。



「……。たしかに、鬱血痕じゃない」

「ウッケツコン?」

「もっと俺に見せて、風間とは何もなかったって証拠」

「へ? ……──ひゃっ」



流れるような手つきでその下のボタンと、さらにもういっこ下のボタンまで外された。



「やぁっ待って、そんなとこまで開けなくても……っ」



夕暮れ時とはいえ。

下着が素肌を隠してくれてるとはいえ。

好きな人にとつぜん胸元を見られて冷静でいられるほどの経験は当たり前に積んでない。
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