綾川くんが君臨する
綾川くんのボタン……は、一番上まで全部留まってる。
この人の首元が開いてるのを見たことがない。
失礼だけど、校則をきっちり守るタイプとはとても思えない。
そういえば、体育のときもタートルネックのインナーを着てた気がする……。
──『この下、何隠してんの?』
わたしに尋ねたのは、もしかして、綾川くんも……何か、隠してるから?
今まで大して気に留めてなかったことが、急に火がついたように気になってきた。
「綾川くん、」
半ば無意識に伸ばした指先は──彼の襟に触れることなく宙を切る。
………避け、られた。
「なに。やらしい気分にでもなった?」
にやっと笑顔で躱される。
いつもこうだ。
わたしには無遠慮に触れてくるくせに、わたしが踏み込もうとすれば、するりと避けて
──雲みたいに、掴めない男の子。
綾川くんの概要その4。
シャツのボタンは一番上まで留めるタイプ。
何を隠しているのかは……不明。