綾川くんが君臨する
「あ、黒鐘さんの飴だったんだ。なんか甘い匂いすると思った〜」
3限目の休み時間。
ポーチからのど飴を取り出すところを発見した風間くんが、机に手をついて話しかけてきた。
「桃味なんだね、美味しそう」
「風間くんも食べる? のど飴だけど」
「え〜いいの? 風邪予防にもらっちゃおうかな」
「どうぞどうぞ〜。いっぱい持ってきたから2つあげるね」
「やった、ありがとう。黒鐘さん太っ腹だね」
さっそく1粒口に放り込んで、爽やかスマイルを炸裂させる風間くん。
釣られてにこにこしていると、背後あたりから、なにやら強い視線を感じた。
そうだった。
わたし、クラスの人たちに風間くんが好きだって誤解されてるんだった。
これはからかいの視線に違いない。
「ていうか黒鐘さん、もしかしてのど痛めてるの?」
視線には気づかないフリをして、笑顔を崩さず風間くんに向き直る。