綾川くんが君臨する

すると、相手はわかりやすく長いため息を吐きながらわたしの隣の机に座った。

そう、椅子の上じゃなくて、机の上。



「お前ほんと使えない」


長い脚を組んで、だるそうに後ろに手をついて、偉そうに見下ろしてくる。

窓から差し込んだ夕陽が嫌味なくらいの神々しさを演出していて、まるで異世界から召喚された大魔神みたい。




「今日当番のヤツ放送室から引きずり出して来てよ」

「もう、バカなこと言わないで」


「草取り手伝ってやったじゃん」

「そ、そうだけど、そのお礼はまた改めてということで……。とにかく、わたしはもう帰るからね」


「バカはどっちだよ。そんなフラフラで帰れると思ってんの」



荷物を持って立ち上がった瞬間に腕をとられる。



「っ、離……――」


どきっ、という衝撃とともに眩暈がした。


腰を引き寄せられて倒れ込んだ先で、ほのかなムスクにくすぐられる。

なぜかひどく安心して、そのぬくもりの中に素直に体を預けてしまった。
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