綾川くんが君臨する

はいはい。
カギャク趣味だから、可哀想なのが好きなんでしょ、よかったね。


でも綾川くんはちょっとだけ勘違いしてる。


わたしが熱のせいで抵抗できなかったと思ってるみたいだけど、相手が綾川くんじゃなかったら熱があろうとなかろうと絶対拒んでた。

眠くて無意識に告白オッケーしちゃうずさん者の綾川くんと違って、わたしは恋愛に誠実だからね。


今のは好きな人とのキスだから、残念だけど “可哀想” じゃないよ。



「金曜までに風邪治してよ。わかった?」

「……きん、よう?」


「黒鐘が当番じゃないと、おれが放送室使えなくて困るから」

「……なにその自分勝手な理由……。そんな簡単に治るなら苦労しないよ」


「大丈夫。全部おれがもらってやるから、唇こっち寄越して」

「え……――んぅ、」



まさに“奪う”という表現が正しい。

言葉通り唇を奪われた。

< 66 / 78 >

この作品をシェア

pagetop