綾川くんが君臨する
「や、待って……さっきのど飴なめて、まだ欠片残ってて、」
「ん……ほんとだ、甘」
濡れた感触が伝わって、甘い刺激とともにぐたっと力が抜けるから、必然的に体がさらに密着する。
机の上に座るってだけでも、あんまりよろしくない行為なのに。
膝に跨って、向かい合って……。
こんなところ、誰かに、見られたら。
「口ん中、あっついね……熱、そうとうやばいんじゃないの。三十……八度、五分くらい?」
「んぅ、っ、……や、ぁ」
もう、バカ。
こんな熱の測り方聞いたことないよ。どうせでたらめだ。わかりっこない。
理性を保つために心の中で毒ついてみたけど、吐息が絡んで、くらくらして、もう……。
「もうだめ、……、だめっ」
胸板を押し返す。
もちろんびくともしない。
でも……。
「これ以上したら……」
ブレーキ緩んで、今度は自分から求めてしまう。
そんな危険を本能で察知した。
わたしだけズブズブ深みにハマっていくの、虚しいから……そうなる前に、拒ないと。
そうだ……首元。
いつも隠して、触れさせない。
綾川くんの、唯一の弱点かもしれない、場所。
「これ以上したら……ボタン、外すからね」
いちかばちか。
逃がしてくれないなら、反対に攻める作戦。
襟をつかんで、自分のほうに引き寄せた。