綾川くんが君臨する

確実に捕らえたと思った。

だって、指先は確かに襟を掴んでたから。

掴んでたはず……だったのに。



「わっ――ひゃ?」


0.2秒後、わたしの指先は綾川くんに絡めとられていた。

いわゆる恋人繋ぎのかたちで、間に接着剤でも塗られてるのかってくらい、ぎっちりがっちり離れない。


……な、
いつの間にわたしの手を掴んで……。

動き、全然見えなかった。



「おっと、危ない危ない」



そう言って笑う綾川くんはいつもに増して色っぽく見える。

ああ……色気で人をころせそうだ。


首元を暴くことはできなかったけど、目的は綾川くんからのキスを止めることだったので結果オーライ

……いや。


今度は手のひらが密着してるせいで全意識がそこに向いて、自分とは全然違う体温にますます熱の上がる気配がする。

このままじゃ高熱でしんじゃう。



「は、離して、もうボタン外そうとしたりしないから、拘束しなくて大丈夫だから」

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