綾川くんが君臨する
「そんな言葉、信用できるとでも」
「ほんとだよっ、ほんとにもう外さないから絶対」
「ふーん。……ま、黒鐘になら外されてもいいんだけど」
「……へ?」
「またいつかね」
くすっと妖しい笑みに、魔法にかかったみたいにうっとりした気分になって。
でもそのすぐ後、廊下からパタパタと慌ただしい足音が近づいてきたことで我に返った。
「綾川くん離れないと! 人が来ちゃう!」
「わかったわかった、下ろしてやるから暴れないの」
なんとか解放されて、すばやく距離を取った直後、勢いよく教室の扉が開いた。
勢いよすぎたあまりバウンドして半開き状態になった扉からひょっこり顔を覗かせたのは、ひとりの女の子。
「咲綾先輩いた〜〜よかった〜〜!」
「っ! ユナちゃん」
──ユナちゃん。
我が放送委員会の1年生、なんとかチューバーっていう配信者をしているらしい可愛い女の子である。