綾川くんが君臨する

ない表情筋をここぞとばかりに使って、にこ、と微笑んでみせる綾川くん。


嘘ばっかり。

放送室を使いたいがためにそんなこと言っちゃって。

だけどわたしの心臓はちょろすぎるから、綾川くんの言葉ひとつで簡単に暴れるんだ。



「褒めた途端に大人しくなるの、やめなね。将来クズい男に引っかかって都合のイイ女扱いされそー……」

「ご心配どうもだけど、褒め言葉いちいち本気にしてないから大丈夫だよ」



ていうかもう遅いんだってば。

すでに都合のイイ女扱いされてるよ、あなたに……。



わたし、どうして綾川くんなんかのことが好きなんだろう。

……と、これまでの経緯を思い返した。



綾川くん。── 綾川星くん。

現在高校2年生の16歳。


ひとことで言えば、学校イチの有名人。
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