綾川くんが君臨する
綾川くんが廊下を歩けば軽く騒ぎが起こる。
芸能人顔負けのルックスの良さ、おそらく180はありそうな長身。
綾川くんは、そんなきらきらな外見と裏腹に、とても……──なんていうか、不穏、なのだ。
何事にもやる気ナシ、興味ナシ。
だるい、を具現化したような男の子。
平気で遅刻するし早退するし。
かと思えば、朝一番に誰よりも早く来て外をぼーっと眺めたりしてる、かなりの気まぐれ。
話しかけられれば誰とでもそつなく会話をするので、ただの、ちょっと不思議でだるそうな人、で片付けてしまえばそれまでなんだけど。
雰囲気?オーラ?
全部、どことなく冷ややか、なのである。
綺麗なアーモンドアイには昏い影が落ちていて、ふとした瞬間にナイフみたいに見えるし。
口調はゆったりめなのに、言葉の端々には刺すような鋭さがある。
そのミスマッチが心を乱してくるんだと思う。