綾川くんが君臨する

勝手にみんなの視線を奪って、心を奪って。

それを愉悦するわけでもなく、そんなの知ったことじゃないとスルーし続ける無関心ささえも魅力になっちゃって。


わたしの中での極めつけは……。


授業中、いつもだるそうな綾川くんが、珍しく真剣に教科書に向かっているなあと横目で観察していたら。


よく見ると、それは教科書じゃなく、外側を教科書でカモフラージュした「ネコの図鑑」だったこと。



『えぇ……!』


思わず声が出ちゃって、先生に注意されて。

クラスメイトに笑われる中、恥ずかしさのあまり目をうろうろさせてたら、当の綾川くんとバチ!と目が合って。


くす、と笑われたんだ。


同時に心臓があっけなく狂った。


それが、もはや抗いようのない引力に囚われた瞬間だった。



「まさか、こんなどエス星人だとは……思わなかったよ、」

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