急募！ベリーの若様が花嫁を御所望です！
あの男、今月からこのベリータワー支社勤務になったぞ…」

「！」

「明日からこっちに出社するそうだ…」

「う…そ…」

「美智が…誰がアイツにお前の事を漏らしたのか探し出して、今度同期会で吊るし上げてやるって息巻いていた…」

「ダメよ…やめてって美智に言って！だって…同期からだけじゃなくたって、調べようと思えば、いくらでもわかってしまったことよ」

「うん、そう言っておく。だが美智も俺も、アイツをお前に会わせたくはない。それに…なんか嫌な予感がするんだ…。美智もそう言っていた。
二年前にも思ったけど…あんな事をしておきながら、アイツのお前に対する態度は異常だったぞ。
悪いことは言わない。池澤には会わないように気をつけろ！」

「…！う…ん…」

グラスを持つ指が震える。

柳谷が、宥めるように亜里砂の背中をぽんぽんと優しく叩いた。

「ほんと、そもそも何でお前みたいな奴が、あんな男に引っかかったんだか…」

「やめて…。私が一番そう思ってるから…」

亜里砂と柳谷の胸に、二年前の苦い思い出が甦る。

暫し二人は言葉なく、グラスを傾けた。

< 104 / 217 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop