急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
(どうして連絡通路なんかで会っちゃったんだろう?若様は専用地下通路を通って移動するんじゃないの?
もしかして…馬が人参を食べ過ぎて、お腹を壊していたりするのかしら…)
勿論…大也が地下通路を、馬で駆け抜けているという噂などは出鱈目で、亜里砂も以前は全く信じてなどいなかったのだが…。
大也と出会って、彼自身から地下通路の存在を聞いてしまった今、なぜか亜里砂はその噂を信じてしまっていた。
大也の、戦国時代の名のある武将のような…眉が濃く意思の強そうなキリリとした顔には、馬や鎧兜や陣羽織が、はまり過ぎると思ったからだった。
さすがに鎧兜や陣羽織は無いだろうが、ワンチャン馬はあり得る。
いや、寧ろそうであって欲しい。
雲の下に、これまで滅多に降りてくることのなかった筈の若様に、なぜかベリーヒルズビレッジ内の至る所で、ほぼ毎日遭遇してしまう事が、亜里砂には不思議でならなかった。
しかもどこで会っても、大也は必ず亜里砂をタワー八階のオフィス前まで送ってくれる。
(若様と出会う前にも、私が認識していなかっただけで、実はそこら中で出くわしていたのかなぁ…?なんだ、全然ツチノコなんかじゃないじゃない、あの方…)
恋愛事に鈍過ぎる亜里砂は、大也が自分に会いたいがために、とある方法で亜里砂の動向を追い、少しの暇を見つけて、わざわざ会いに来ているとは思いもしない。